尿失禁について

尿失禁のイメージ写真

尿失禁は自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう症状です。
さらに尿漏れの症状により「社会的・衛生的に支障を生じるもの」と定義されています。
尿失禁は大きく生活の質を損なう症状です。実際の患者さんでも、数多い訴えの中で最も強く改善を望まれるているのが失禁症状です。
一方で失禁症状は患者さん自身に強い羞恥心を与える症状でもあります。そのため、恥ずかしさから受診に繋がらないというケースも多いようです。
当院は患者さんそれぞれの失禁症状の原因について詳しく問診することから始まり、検査、治療へと繋げていきます。
受付窓口で症状の詳細を話したくない場合は、診察室内のみで症状をお話しいただけますので、問診票にその旨を書き込んで下さい。
どうか一人で我慢しないでまずはご相談ください。

尿失禁のタイプについて

切迫性尿失禁
急激な強い尿意が我慢できず、トイレまで間に合わずに尿が漏れてしまうタイプ
腹圧性尿失禁
尿意とは関係なく、咳やくしゃみ、重いものを持ち上げるなどしてお腹に力が加わった拍子に尿が漏れてしまうタイプ
混合性尿失禁
切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の混在するタイプ
溢流性尿失禁
尿意の感覚が鈍いか、あるいはなくなっており、頻繁に少量ずつの尿もれが断続的に続いているタイプ
機能性尿失禁
身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿漏れ。膀胱の機能は正常なこともある
夜尿
寝ている間、目が覚めぬままに尿が漏れる(いわゆるオネショの症状)
遺尿
日中何かに夢中になっている時などに気づかぬ間に尿が漏れるタイプ

尿失禁の治療について

ここでは主に切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の治療について概説します。
失禁の治療法には大きく分けて生活療法、理学的療法、薬物療法とがあります。

生活療法

最も重要視されているのは減量です。
身長と体重から算出されるBMIと尿失禁との関係には多くの報告がありますが、運動・食事療法で減量を行うことは切迫性尿失禁にも、腹圧性尿失禁にも効果があると言われています。
しかしながら減量を達成してもその体重を長期間維持することは難しいことが課題と言えます。
そのほかの生活療法として、適度な運動は切迫性尿失禁の改善につながるという報告があります。
一方で激しい運動や重量物を持ち上げる動作は腹圧性尿失禁を悪化させるリスクもあると言われています。
また喫煙による切迫性尿失禁悪化のリスクについても指摘があります。
飲酒やカフェインを含む飲料の摂取と失禁症状との関連は様々に議論されていますが、まだ結論は出ていません。
また便秘でいきんで排便することは、女性に腹圧性尿失禁の症状を悪化させる可能性が言われています。

理学的療法

最も代表的なものは骨盤底筋訓練と膀胱訓練です。
骨盤底筋訓練の作用は、腹圧性尿失禁に対しては骨盤底筋の筋肥大をきたし、腹圧時の骨盤底筋収縮を向上させることです。
切迫性尿失禁に対しては、骨盤底筋の収縮を強めることによって、排尿筋(膀胱の筋肉)の過剰な収縮が反射的に抑制されるためと言われています。
骨盤底筋訓練が薬物療法に比べて優れている点の一つは、副作用がほとんどないことです。
尿失禁の初期治療の第一選択として推奨されていますが、その方法は、口頭指導やパンフレットを渡すものから、腟や肛門の内診を併用する方法まで実に多様です。
当院では主にパンフレットを用いた方法をとっています。
膀胱訓練は排尿を我慢させる訓練法です。
切迫性尿失禁に対する治療方法として、1回目の尿意を我慢するように指導しています。
薬物療法と併用されることが多く、こちらの方法も副作用はほとんど認めないことが特徴です。

薬物療法

尿失禁の薬物療法は生活療養や理学的療法と組み合わせて行われます。使用薬剤は多岐に渡るのでここでは代表的なものをご紹介します。

切迫性尿失禁の主な治療薬

β3作動薬

ミラベグロン

商品名
(先発医薬品)
ベタニス
用法・用量
25ないし50mgを1日1回食後に内服

ビベグロン

商品名
(先発医薬品)
ベオーバ
用法・用量
50mgを1日1回食後に内服

抗コリン薬

フェソテロジン

商品名
(先発医薬品)
トビエース
用法・用量
4mgを1日1回内服
1日8mgまで増量可

トルテロジン

商品名
(先発医薬品)
デトルシトール
用法・用量
4mgを1日1回内服

イミダフェナシン

商品名
(先発医薬品)
ウリトス
用法・用量
1回0.1mgを朝夕食後に内服
1回0.2mgまで増量可

ソリフェナシン

商品名
(先発医薬品)
ベシケア
用法・用量
2.5ないし5mgを1日1回内服
10mgまで増量可

プロピベリン

商品名
(先発医薬品)
バップフォー
用法・用量
10ないし20mgを1日1回内服
1日2回内服に増量可

その他の薬

フラボキサート

商品名
(先発医薬品)
ブラダロン
用法・用量
1回200mgを1日3回経口内服

三環系抗うつ薬

商品名
(先発医薬品)
トフラニール・アナフラニール
用法・用量
小児夜尿症/遺尿症に適用

ボツリヌス毒素

商品名
(先発医薬品)
ボトックス
用法・用量
他の内服薬で効果不十分な場合
膀胱筋層に注入

漢方薬

商品名
(先発医薬品)
牛車腎気丸・八味地黄丸
用法・用量
1日7.5gを2~3回に分けて内服

腹圧性尿失禁の主な治療薬

β2作動薬

クレンブテロール

商品名
(先発医薬品)
スピロペント
用法・用量
1回20μgを1日2回内服
60μg/日まで増量可

その他の薬

漢方薬

商品名
(先発医薬品)
補中益気湯など
用法・用量
1日7.5gを2~3回に分けて内服

三環系抗うつ薬

商品名
(先発医薬品)
トフラニール・アナフラニール
用法・用量
小児夜尿症/遺尿症に適用

αアドレナリン受容体刺激薬

商品名
(先発医薬品)
エフェドリンなど
用法・用量
国内では保険適用外

デュロキセチン

商品名
(先発医薬品)
サインバルタカプセル
用法・用量
国内では保険適用外